和式が怖い、暗くて行けない。避難所で子どもが抱える「トイレのストレス」と自治体ができる環境づくり

災害時、小さな体で大人以上の不安と戦っているのが子どもたちです。中でも「トイレ」は、暗さや臭い、使い慣れない環境などが重なり、子どもにとってもっとも行きづらい場所の一つ。
この記事では、実際にあった「子どもたちの困りごと」を踏まえ、自治体などの運営側ができる「やさしい環境づくり」と対策について解説します。
避難所のトイレで、子どもが抱えやすいストレスとリスク

慣れない避難所のトイレには、大人とは違う「子どもならではの壁」がたくさんあります。
まずは、子どもたちが具体的にどんな不安や危険にさらされているのか、大人がしっかり知っておきましょう。
和式トイレが使えない・落ちそうで怖い
現代の子どもの多くは、家庭などの洋式トイレにしか慣れていません。一方で、避難所となる小中学校や古い公共施設では、まだ和式トイレが残っているところもあります。
実際、2024年の能登半島地震でも、避難所のトイレが和式ばかりで「使い方がわからず、子どもが排泄を我慢してしまった」という声があったそうです。
「またがり方がわからない」「穴に落ちそうで怖い」。そんな恐怖心から、トイレ自体を拒んでしまうのです。
「暗い・臭い・汚い」への恐怖心
もともと、学校や公共施設の薄暗いトイレに対して、「怖い」「臭い」といった苦手意識を持っている子どもは少なくありません。
災害時はそこに、「停電による真っ暗闇」や「清掃が行き届かない強烈な臭い」が加わります。
ただでさえ入りにくい場所が、子どもにとっては、恐怖そのものに変わってしまい、生理的に受け付けなくなってしまうのです。
失敗による自己嫌悪(赤ちゃん返り)
災害時の強いストレスで、トイレトレーニングが完了していた子が粗相をしてしまったり、おねしょ(夜尿)が再開したりすることは珍しくありません。
これは決してふざけているわけではなく、不安な心を守ろうとする「赤ちゃん返り」と呼ばれる反応です。
しかし、失敗したことで「怒られるかも」「恥ずかしい」と深く傷ついてしまい、トイレに行くこと自体を恐れるようになってしまうことも多いのです。
防犯上の不安(連れ去りなどのリスク)
もっとも警戒すべきなのが、混乱に乗じた犯罪リスクです。悲しい現実ですが、過去の災害でも、トイレや更衣室などの死角で、子どもや女性が被害に遭うトラブルが報告されています。
「少しの間だから」という油断が、取り返しのつかない事態につながりかねません。
自治体・運営側が整えたい「子どもを守るトイレ環境」

子どもが安心してトイレに行けるようにするには、使いやすい設備の準備と、子どもを守るためのルール作りの両方が必要です。
トイレの洋式化と、踏み台などの工夫
子どもが安心して座れるよう、洋式トイレの確保は必須です。
和式しかない場合は「洋式便座アタッチメント」を活用したり、子どもが座りやすいよう足元に踏み台を用意したりする工夫があると、恐怖心を和らげることができます。
また、既存のトイレがどうしても合わない子どものために、座れるタイプの簡易トイレを準備しておくのも有効です。これなら、場所を選ばずに「いつものトイレ」に近い環境をすぐに作ってあげられます。
「子ども一人では行かせない」ルールの徹底
防犯対策の基本は、「絶対に子ども一人でトイレに行かせない」というルールの周知です。
運営側として、「トイレはおうちの人と一緒に行きましょう」とポスターで掲示したり、アナウンスで呼びかけたりして、保護者の意識を高めるサポートが重要です。
明るさの確保とトイレの配置
「暗くて怖い」をなくすため、トイレまでの動線や個室内の照明を明るく保ちましょう。
また、防犯対策として、女性や子ども用のトイレは管理者の目が届きやすい場所に設置したり、男性用トイレとは入り口を離したりするなど、配置の工夫も大切です。
失敗しても大丈夫な雰囲気づくりと心のケア
万が一、粗相やおねしょをしてしまっても、親子が追い詰められないような配慮が必要です。
保護者に対しては、「災害時は誰にでも起こりうる反応です」と周知し、子どもを叱らなくてもいいように心の負担を軽くしてあげましょう。また、汚れてしまった下着を、人目を気にせず洗ったり、着替えたりできるスペースを目立たない場所に確保することも重要です。
さらに、子どもの不安そのものを和らげるために、遊びやイベントを企画するのもよいでしょう。少しでも笑顔になれる時間を作ることで、張り詰めた心がほぐれ、結果としてトイレの失敗(ストレス反応)を減らすことにつながります。
子ども連れ避難でも安心できるように、備蓄しておきたいアイテム

子どもを守るためには、設備だけでなく、実用的な備蓄品の準備も欠かせません。
- 子ども用・大人用おむつ
ストレスでおむつが必要になる子もいるため、普段おむつをしていない年齢のサイズ(ビッグサイズや大人用Sサイズなど)も含めて多めに備蓄しておきましょう。
- 携帯トイレ・簡易トイレ
夜間のトイレ移動は、子どもにとって恐怖であり、防犯リスクも大きくなります。各家庭の居住スペースで使える携帯トイレがあれば、夜中でも親の目の届く範囲で安心して用を足せます。
自治体として、住民に「家庭での備蓄」を呼びかけることはもちろん、いざという時に各家庭へ配れるよう、配布用の携帯トイレもしっかり備蓄しておきましょう。
- 子どもでも分かるイラスト掲示や明かり
親がトイレまで付き添ったとしても、個室の中では子ども一人きりになります。ドアを閉めた瞬間に真っ暗になったり、使い方がわからなかったりすると、子どもはパニックになってしまうこともあるでしょう。
そのため、文字が読めなくても直感的にわかる「イラスト付きのポスター」や、個室内を明るく照らす「照明(ランタンなど)」を準備し、閉鎖された空間でも安心して使える環境を整えてあげることが大切です。
子どもも大人も、安心できる避難所へ

子どもにとってトイレが「怖い場所」でなくなれば、避難所生活のストレスはぐっと軽くなります。親子で安心できる環境を整えることは、子どもたちの笑顔を守ることにつながります。
「備蓄」は、未来の安心へのプレゼント。子どもたちの心と体を守るために、ぜひ「誰にでもやさしいトイレ備蓄」を検討してみてください。
【自治体・企業備蓄向け】これ1つで運営開始!
\分かりやすいイラスト掲示物で子どもも安心/
【監修】防災士・柳原志保(しほママ)

東日本大震災での被災経験から、「本当に現場で使える」にこだわってQbitシリーズの開発を監修。「食べ物は我慢できても、トイレは我慢できない」——。開発に込めたしほママの想いとストーリーはこちら。
