避難所のトイレ、高齢者はここに困る!心と体の負担を減らすためにできること

避難生活は誰にとってもストレスがかかるものですが、足腰に不安のある高齢者の方にとっては特に切実です。中でも、人に相談しづらく、悩みの種となるのが「トイレ」の問題。
「使いにくい」「汚い」といった環境により、ついつい我慢をしてしまい、結果として体調を崩されてしまうケースも少なくありません。
この記事では、内閣府の「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」を参考に、高齢者が直面するリスクと、自治体や運営側ができる対策について解説します。
避難所のトイレで、高齢者が抱えやすい悩みとリスク

高齢者にとって、避難所のトイレは「使いにくい」だけでなく、心身の健康を損なう原因にもなります。
まずは具体的な困りごとを知っておきましょう。
和式トイレだとしゃがめない・立ち上がれない
学校や公園には和式トイレが多く残っているところもあります。膝や腰に痛みがある高齢者にとって、しゃがむ・立つ動作は大きな負担です。
「一度しゃがんだら、もう自力では立てないかもしれない」。そんな恐怖心から、トイレに行くこと自体を諦めてしまうこともあります。
移動の距離が遠い・段差で転びそうになる
屋外の仮設トイレが設置してある場合、遠かったり段差があったりして、移動が難しいことがあります。
特に夜間の暗がりを歩くのは、転倒して怪我をするリスクが高く、大きな不安要素です。
寒さや温度差が体への負担になる
冬場の屋外や暖房のないトイレへの移動は、急激な温度変化(ヒートショック)による体への負担が心配です。
また、寒さで体がこわばって思うように動けず、段差でつまづいたり、転倒したりする危険性も高まってしまいます。
「迷惑をかけたくない」と水分やトイレを我慢してしまう
もっとも注意したいのが、遠慮やストレスから水分・食事を控えてしまうことです。
水分不足は脱水症状だけでなく、長時間動かないことによる「エコノミークラス症候群」や、免疫力の低下などの体調不良を引き起こすこともあるので注意が必要です。
自治体が整えておきたい「高齢者に配慮したトイレ環境」

高齢者も安心してトイレを使える環境づくりは、心身の負担やリスクを減らすことにつながります。
高齢者への主な配慮ポイントをまとめました。
洋式トイレや手すり付きトイレを確保する
足腰への負担を減らすため、洋式トイレの確保は必須です。
既存の洋式トイレは、高齢者や障害者、女性が優先的に使えるよう割り当てるよう、内閣府の避難所におけるトイレの確保・管理ガイドラインにも、記してあります。
また、座って使える組立式の簡易トイレを活用するのも一案です。これなら、和式トイレしかない場所でも、すぐに高齢者にやさしいトイレ環境を作ることができます。
さらに、高齢者が使うトイレは、介助者も入れるよう、スペースを広くとれると安心です。
居住スペースから近く、段差のない場所に設置する
高齢者のスペースはトイレに近い1階などに確保するのが望ましいでしょう。
仮設トイレの場合も、できるだけ段差が少ない場所を選んだり、スロープを設置したりしてバリアフリー化を図りましょう。
夜間でも安全に移動できるよう足元を照らす
転倒防止のため、動線や個室内の照明確保は重要です。停電時も安全に移動できるよう、蓄光テープやセンサーライトを活用して暗さ対策を整えておきましょう。
高齢者も安心できる避難所づくりのために、備蓄しておきたいアイテム

高齢者が使いやすいトイレの設置や整備に加え、備蓄品も配慮して選ぶことが大切です。
大人用おむつ・尿とりパッド・おしり拭き
洗濯・入浴ができない環境での衛生保持に必須です。自尊心に配慮し、配布用の不透明な袋もあると喜ばれます。
携帯トイレ(凝固剤と排泄袋)
携帯トイレの備えは、内閣府のガイドラインにもあるとおり、必須です。
既存のトイレに設置して使うほか、移動が難しい高齢者にとって、居住スペース内で使うえるという安心にもつながります。組立式の簡易トイレ等に設置して使えば、夜間の移動による転倒リスクを減らすことができます。
トイレの案内表示や使い方を知らせるポスター
高齢者の方にとって、見慣れない簡易トイレや携帯トイレの使い方は分かりにくいものです。
しかし、被災した混乱の中で、運営スタッフが分かりやすいポスターを一から手作りするのは現実的ではありません。
そこでおすすめなのが、「写真付きの使い方ポスター」や「案内表示」があらかじめ同梱されている避難所用のセットです。箱を開けてすぐ掲示して使えるので、高齢者にも分かりやすいトイレ環境を素早く整えることができます。
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\写真付きの案内・掲示物で高齢者にもやさしい/
高齢者も安心して過ごせる避難所環境へ

高齢者の方にとって、トイレが安心して使えるかどうかは「避難生活の安心」そのものです。
「転ばないかな」「迷惑じゃないかな」という不安を取り除き、心も体も健康に過ごせる環境を整えましょう。
【監修】防災士・柳原志保(しほママ)

東日本大震災での被災経験から、「本当に現場で使える」にこだわってQbitシリーズの開発を監修。「食べ物は我慢できても、トイレは我慢できない」——。開発に込めたしほママの想いとストーリーはこちら。
